君の名は。

今話題の映画は「君の名は」と「シン・ゴジラ」である。ゴジラは監督に庵野 秀明を起用して従来にないリアルな作品となって大人の観客を集めているとか。ネットでの評判がすごい口コミとなって広がっている。未見なので何とも言えない。ふつうならゴジラと聞いただけで見る気は起きないが今作は見てみようかな、と気になっている。

「君の名は」は新海誠作品なのでそれだけで期待できる。青少年向けアニメ作品なのに夏休み終了後の公開というのがいささか理解できないが、公開と同時に大ヒットとなって、ジブリ作品以上の興行収入も期待できるらしいからすごい。ネットをチェックしてはいないが、ネット上では大盛り上がり。ありとあらゆるレビューが書かれているだろうから、あえて私がそれに付け加えるほどもないのではあるが、備忘録のつもりで記しておく。ーー画像はYoutubeの予告編からのスクリーンショットーー



以下ネタバレあり。「君の名は」、といっても往年の放送時刻に女風呂が空になったというラジオドラマや映画ではない。現代の高校生の物語である。予告編をチラ見して、大林宣彦監督の尾道三部作の名作、「転校生」の翻案かな、とも思った。高校生の男女の体が、というか心が入れ替わる、というのが物語の発端である。まずはこれだけで十分にキャッチー。それだけでもドラマをぐいぐい引っ張っていけるが、そこを深堀りすると違った方向に行ってしまう。根本はピュアなラブロマンスで、タイムスリップ的な要素、パニック映画的要素を加えて複雑な物語展開としているのがこの作品のエライところ。展開についていけなかった、という人も多いのではないか。

左がヒロインの三葉、右が瀧。瀧は姓ではなく名。
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「転校生」と異なり、二人の男女は東京と飛騨と地理的に離れ、さらに3年の時差もあるのでおいそれと出会うわけにもいかない。しかし、この3年の時差がヒロイン三葉と彼女の村を危機から救うカギとなる。その危機とは、三葉のリアルタイムで飛騨の山中に彗星が落下して三葉本人も村民500名とともに死亡するという大惨事。3年後に生きる相手役の少年・瀧の側からは既知の出来事であり、過去の改変にトライすることになる。詳しい経過は書かないので見ていただきたい。

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結論的に言えば、新海作品らしい、美しい情景描写を見るだけでも眼福である。田舎の情景もよくできてはいるが、真骨頂は都市景観の美しさ。東京をいかにリアルに描写しているとは言ってもそこには作家の審美眼により濾過されているので、あんな雑駁な景観から美を抽象できるのは新海の才能である。アメリカでは3Dアニメの時代に移行して久しいが日本ではあいかわらず2Dアニメが盛んである。新海の作品を見ると2Dでも新たな可能性があるんじゃないか、と思える。ジブリとの違いは背景のコンピュータ描画の多用である。動画でも多用されているようだ。ただし背景のリアルさと平面的なキャラクターの落差は大きい。

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新海誠(1973年生)本人が原作・脚本も務める。彼の以前の作品から、新海の才能は美しい画面作りなんだ、と思っていたらストーリーも演出もなかなか素晴らしい力を持っている。60代が見ても十分楽しめる。ただし、10代の少年少女が感じるであろう感動とか胸キュンとかは残念ながらない。私が中学生で見たならば1週間くらい夢にうなされるくらい心奪われるだろうが。

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今作は配給が東宝。新海としては今作で初めてメジャーな配給体制と十分な予算、さらに充実したベテランスタッフ、という大きな舞台を得たことになる。それがアニメオタクに限定されない広範な若者の心をとらえ、さらには興行的にも大成功を収めている。つまり、これで新海誠はかつての宮崎駿の地位を獲得したと言っていいのではないだろうか。アニメ界には庵野秀明、細田守、押井守らジブリ以外にも作家性のあるヒットメーカーはいないではないが、今作の新海のヒットは別格である。東宝は今作の大ヒットに味をしめて当然次回作を狙うはずだから新海は今後仕事が絶えることはないだろう。

かつて1990年代から2000年代にかけて夏休みは家族でジブリ作品を見ることに決まっていた時期があった。「となりのトトロ」から「千と千尋」あたりまでがジブリの黄金時代か。おおむね宮崎駿の才能に依拠していたわけで、宮崎氏が新作を作らないとなって俄然ジブリの神通力が陰った。しかし、日本には次の才能がいた。新海は43歳だからアニメ作家としては油が乗ったところ。新海作品はジブリ同様、海外でも広く受け入れられるだろう。

よくできた作品だが、あえて難を言えば・・・・。そもそも男女の体と精神が入れ替わる、という荒唐無稽な設定に合理性がない、といえばないのであるが、そこは置いといて、タイムスリップ物にありがちな矛盾もあちこち突っ込みどころがあるし、「なんでもあり」のパラレルワールドを想定したような所も見られる。クライマックスの隕石落下の場面では肝心の部分をあえて省略しているのでやや腑に落ちない。二、三度見ないと納得できないくらいである。やはりキッチリとした因果律がないと観客は納得できない。アメリカ3Dアニメ的な明快で先の予想がつきやすい展開をきらったのかもしれない。すでに十分に複雑な設定なんだから、もっと明快にすべきだったのではないか。

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見てきました

台風、大丈夫でしたか?
おかげさまで?連休は山にも行けず生殺し状態でしたが・・トトロさんのこのブログを見てシネコンへ行ってきました。
ほぼ満席で・・たぶん私たちが1番の長老ペア?でういた感じでした^^;
おっしゃっるとおり高齢者にも十分楽しめました!すこし胸キュンもあったような? ファンタジーなストーリーの部分もありましたがおおかた理解できたような気になっています。
アニメもより緻密で高精度になってきましたね。そうしてできた一場面ももったいないくらい短い時間でつぎつぎと展開していくのがすばらしいと感じました。ストーリーにかぶさるような歌(音楽)も良かったです。
またいい映画の紹介を待っています!

じなしさんへ

えーーっ、見たんですか。楽しめて幸いでした。音楽がよかった、なんて感性は若者ですね。私には音楽は理解できませんでしたよ。
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トトロのとなり

Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
お金がないので遠くには行けない。
お金がないのでグルメ記事はなし。

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