オライオン飛行

たまたま図書館で手に取った「オライオン飛行」(高樹のぶ子)を読んでみた。「飛行」の文字に引っかかったのである。「飛行機」の話はなんにつけ興味がある。結論的に言うと、私にはとても面白かった。以下ネタばれあり。

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PC138089 posted by (C)オトジマ

リンドバーグやサン・デグジュペリ、日本では延岡の後藤勇吉など、飛行士が空の英雄だった時代がある。宮崎駿の「紅の豚」もそんな時代。多くの飛行士が世界各地で長距離飛行の記録に挑んだ。後藤勇吉は太平洋横断飛行に挑もうとしていたが、その練習中に事故を起こし死亡した。

霞ヶ浦で太平洋横断をめざし訓練中のヒコーキ野郎たち。左端が後藤勇吉。
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門川海浜公園に立つ後藤勇吉像。ここの尾末湾も後藤が水上機の訓練をした場所。勇吉は延岡の英雄である。
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小説の主人公、ジャピーと全く同時代人でライバルであったサン・テグジュペリはパリーサイゴン間の飛行に飛び立って航路を誤りリビアの砂漠に不時着してしまった。彼はそこで例の「星の王子様」に出会ったわけだ。テグジュペリの場合はそれが不幸中の幸いだった。当時の航空界の状況はウィキペディアのココに詳しい。

ジャピーのたどった航路。ゴールは東京羽田。
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1936年に多額の懸賞金のかかった100時間以内でのフランスから東京への飛行に挑戦した飛行士たちがいた。32歳のフランス人、アンドレ・ジャピーもその一人。彼は夜も寝ずに超人的体力と気力で気象不良の長崎県野母崎上空にたどり着いた。出発から75時間後。当時の金で8億円の賞金と栄誉まであと1000㎞。しかしゴールの羽田に達するには燃料が不足した。そこで福岡の雁ノ巣飛行場で最後の給油をするつもりで航路を北寄りに変更した。福岡の直前の背振山系を越える時、視界不良と高度不足により山頂近くに激突して機体は大破、ジャピーも重症を負い、飛行は失敗した。ドラマはそこからはじまる。
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ジャピーは地元民に救出され九州大学医学部病院に担ぎ込まれる。空の英雄ジャピーは有名人で当時の世界大国フランス人ということもあり、九大病院あげての手厚い看護と待遇を受ける。ジャピーはケガが完治するまでの数か月を医学部病院と九大の別府温泉病院で過ごす。ここまでは史実。その後はフィクションだろう。小説によれば、その間、一貫して看護にあたったのが担当看護婦の桐谷久美子である。

小説でも出てくる九大病院で看護婦たちと写った写真も実際にある。どれが当時18歳の桐谷久美子なのかと気になるが・・・・
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英雄に美女とくれば当然恋に落ちる。二人は全く言葉が通じない中で秘密の恋をはぐくむ。しかしこの恋は決して安穏に成就する恋ではなかった。戦争へと向かう国際情勢、フランスの富豪家の息子としがない看護婦、肉体的な交感はできても会話が成り立たない二人。ジャピーは完治してフランスへ帰る。しかし久美子はその時身ごもっていた・・・・・・

こんな歴史の彼方に秘された悲恋話を、現在の時点から、福岡市在住の久美子の子孫にあたる若い娘とジャピーの形見の懐中時計を修理する時計屋の老人が読み解き、謎を解いていく・・・という話である。舞台はほどんど福岡と大分と佐賀。

まったくのフィクションだと思って読み始めたのであるが、試しにジャピーで検索してみると、沢山の記事がでてくる。私は全く知らなかったのであるが、ジャピーの遭難は当時の日本では大ニュースだったらしい。ジャピーが遭難した背振山には記念碑があるし、佐賀県神埼町のホームページにはジャピー遭難の記事がある。 --神埼市観光協会HPより転載--
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ジャピーの乗っていた飛行機、コードロンC631シムーン。シムーンはフランス語で砂漠の熱風を意味し、イタリア語のギブリと同じ。マセラティ・ギブリというイタリア車がある。スタジオジブリのジブリは実は間違っている。VWの車の名前シロッコも同じ熱風の名称である。、コードロンC6314人乗りであるが、ジャピーは燃料積載のため機関員の乗る乗員席をつぶして燃料タンクを増設し、一人で飛行した。
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ジャピー 8

ジャピーの英雄譚は児童書にもなっている。「飛べ! 赤い翼」(ごんどうちあき著 1991年刊 小峰書店)。わりと簡単にジャピーの飛行をなぞり、墜落後、地元で救出にあたった人々や医師の話が主。全編を通しても「オライオン飛行」よりも情報量はずっと少ない。
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PC148090 posted by (C)オトジマ

さて、小説「オライオン飛行」(オライオンとはいわゆるオリオン座のこと)はジャピーと看護婦・桐谷久美子の切ない恋愛が主題である。ジャピーはほぼ傷が癒えると、別府にある九大の温泉病院に移り、リハビリと温泉治療に励むことになる。ここでは二人は病室ではなく孤立した家を与えられているのでしっかりと愛を育むことができたのである。ここは実在の施設で行ったことがあるので身近に感じられる。
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P3231500 posted by (C)オトジマ

広大な病院である。敷地のほとんどは森林。
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P3231486 posted by (C)オトジマ

入口から建物までが遠い。
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P3231498 posted by (C)オトジマ

鶴見岳が見える。
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市街地の真ん中とは思えないような森の小道。ジャピーと久美子はここを散歩しキスを交わしたのかも。
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ジャピーは帰国後、戦争を生き延びた。ティグジュペリは戦時中はP-38に乗っていて戦死している。戦後は南太平洋の仏領で飛行機に携わり1974年に亡くなった。小説中では久美子も戦後まで生き延びる。その後の二人がどうなったのか、子供がどうなったのかに興味がそそれた方は原作を読んでいただきたい。いかにもロマンティックな悲恋物語である。映画に好適な素材なので映画化されるかも。宮崎駿の「風立ちぬ」も飛行機を交えた悲恋譚である。「紅の豚」と同時代であるからジブリならお手の物。ぜひジブリに作って欲しいな。


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Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
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