久留米市美術館 吉田博展

昨年、NHKの日曜美術館で「吉田博」を見た。全国巡回展に合わせての放送。知らない画家であったが、木版画の超絶技巧に驚いた。久留米市の出身であるから久留米にも巡回があるはず、と期待していたらやっと今年になって回ってきた。その最終日に見に行った。次回が長野、最終が東京で7月から。
yoshida s


吉田博は明治9年生。大昔の人。黒田清輝より10歳ほど下であるが、同世代といってもいい。日本の洋画の草分けである。しかし黒田のような主流ではなく、ちょっと脇道を歩いた野草のような逞しさを持った画家だったようだ。洋画を志す者はパリ留学しなければ箔がつかない。そんな金のない吉田はまず片道の旅費だけでアメリカに渡る。アメリカで水彩画の展観を開催すると絵がバカ売れして思わぬ大金を手にしてその後2年間ゆうゆうと欧米を遊学する。アメリカ人には日本の美しい風景を描いた水彩画が受けた。

これを道路山水の構図というそうだ。そういえば広重にも多くありそうだ。こんなのがアメリカ人に受けたらしい。大分の今市の宿もきっとこんな風だったろう。120年ほど前の日本の風景。水彩
yosida 1
yosida 1 posted by (C)オトジマ

浅間山。ということは中山道かな。水彩
yoshida 5
yoshida 5 posted by (C)オトジマ

ケヤキの大木のある平地林は関東地方に多かった。水彩
yoshida 2
yoshida 2 posted by (C)オトジマ

油絵も当然描いたが吉田を特長づけるのは木版画。当初は江戸時代の浮世絵と同じで原画を描くだけで、あとは版元が彫りも摺りもした。浮世絵と同じで名所絵が中心だった。その後、自分で彫師、摺師を雇って原画から彫り、摺りまで監修するようになる。自分自身で彫る場合もあった。

自分自身で彫ったという渓流図。版を数十版も重ねて刷っている。ものすごい細かな彫の超絶的な版画。サイズもとても大きい。長辺が70㎝。これだけの大きさのヤマザクラの一枚板を数十枚入手するだけでも大変だ。今では不可能ではないか?
yoshida 4
yoshida 4 posted by (C)オトジマ

同じ世代の木版画家に川瀬巴水がいる。彼は江戸時代の広重的な浮世絵の伝統を近代化した作風で、日本より海外で人気が高かった。吉田の版画は江戸の浮世絵を上回る超絶技巧がみられ、画題は山岳風景や海外の風景など必ずしも日本的なテイストを感じさせない作品も多いが、やはり外国人に人気があったようだ。大戦後、マッカーサーはじめ占領軍に大人気だったそうだ。版画だから量産できるのが強み。イギリスのダイアナ妃が吉田博を好んだ、というエピソードもある。

木版。ダイアナ妃の部屋に飾ってあったという瀬戸内海の絵。
yoshida 3
yoshida 3 posted by (C)オトジマ

同じ版を使いながら色を変えると全く別の絵に見える。昼と夕刻の瀬戸内海。
yoshida 8
yoshida 8 posted by (C)オトジマ

展覧会では生涯を通じた全画業が見られ水彩も油絵も版画もある。ところが油絵はうまいのだろうけれど特に魅力的とは思えない。木版画には表現上の制約が多いはずなのに、油彩や水彩の原画が版画になると俄然魅力を放つのが不思議だ

木版。インド、ベナレス。外国を題材にした木版画も多い。
yoshida 6
yoshida 6 posted by (C)オトジマ

山が好きだったようで山岳の絵も多い。90年前の登山の様子。木版。
yoshida 7
yoshida 7 posted by (C)オトジマ

日本の美術史にはまだ私の知らない豊かな遺産があるんだな、と感じ入った。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

トトロのとなり

Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
お金がないので遠くには行けない。
お金がないのでグルメ記事はなし。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR