山田会 東京家族

日向市の山田会は山田洋次のファンクラブで、山田監督の新作の度に日向市でプレミアショーを開催する。山田会の意気に感じた山田監督の厚意によるものである.山田監督は東京と同じ環境で観客に見せたい、ということで音響の機材やスタッフを東京から持ち込む。今や全国のシネコンではデジタル上映が普通であるが、日向にはフィルムを持ち込んだ。フィルム交換タイミングを示す白いポッチが度々あらわれ懐かしかった。今回上映は、全国封切とほぼ同時開催。

今回作品は「東京家族」。いわずと知れた小津安二郎の「東京物語」のリメイクである。名作をリメイクしてもロクな結果にならないことが多いが、今や巨匠となった練達の山田監督には目算があったのだろう。結論的に言えば素晴らしい作品であった。事件も怒号も大恋愛もない淡々とした2時間26分に全く間断がない。といって嵐のような感動の涙というほどはない。リーフレットの「2013年、涙せずにはいられない!」という惹句はいかにも「お涙頂戴」で山田監督の意に沿わないのではないか?「笑っていいとも」で主演の橋爪功が「暖かい涙が得られます。ハンカチは持っていったほうがいいですよ。」と語っていたが、そのくらいでいい。小津の「東京物語」は山田作品よりもさらに淡々としていて泣ける映画ではないが、山田版は小津番よりやや湿っぽいかも。


小津版を知って見ていても面白いが、全然知らない人は先入観がないだけに更にいいと感じるのではないだろうか。現代人に小津版を見せると退屈するかもしれないが、山田版ではそんなことはないだろう。どの俳優もいいが意外なのは林家正蔵。見る前はミスキャストじゃないの?と思っていたが、その軽い演技がなかなか心地よい。彼が茶の間でラッキョをつまみ食いする場面がある。妻に「手でつままないで!」といわれながら2個カリカリと食う。実は撮り直しを重ね、107個も食うハメになったとか。軽そうに見えて、裏では巨匠の厳しい演出があるのだね。

下:橋爪功は72歳、吉行和子は78歳。


老夫婦(橋爪功・吉行和子)の年齢は小津版(72歳・68歳)に準じていると思われる。60年前なら立派に老人であるが、現代でまだハナ垂れ小僧の部類。小津版に倣ったかのようなゆったりしたしゃべり方はちょっと現実離れしているかもしれない。小津版では笠智衆・東山千栄子が演じていて、なんと当時笠智衆は49歳!山田版の長男幸一を演じた西村雅彦 (51歳)より若いが、橋爪よりも年長に見える。阿部寛が48歳だから今の感覚だとまだ若者でも不思議はない実年齢。私より10歳も若いんだから。東山千栄子は当時63歳。これだって現在では83歳に見えるようなフケ作り。


小津版では老夫婦は子ども達から厄介扱いされて熱海の安宿に送り込まれ、いやな思いをしてすぐに引き返すが、山田版では横浜みなとみらいの高級ホテルに行かされ落ち着かない思いをする。熱海から横浜への変化が60年の時代の推移を感じさせて、面白い。

一番大きな違いは、小津版では次男昌二は戦死しており、原節子演じる未亡人紀子が重要な役どころとなる。山田版では昌二は身分不安定な舞台美術スタッフでその恋人が蒼井優演じる紀子である。昌二は長年父親と対立している不肖の息子。ここらの構図は山田監督自身の「息子」(1991年)とそっくり。


山田版では老妻は東京から広島に帰った後で死ぬが、山田版では東京で死ぬ。3世代家族が揃うところで亡くなるので小津版よりウェットたらざるを得ない。



エンディングは小津版では尾道だが山田版では瀬戸内海の大崎上島。孫の少女が瀬戸内海を背景に元気良く走って犬を散歩させるエンディングに観客は救われる。コチラにロケ地情報がある。
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のりうつる

5~6年前に宮崎映画祭で観ました。その時はストーリーと笠智衆の演技に涙しました。しかしこの動画を見たら、息子側から映画を反芻してジ~ンとしました。もうすぐ笠智衆側から観ることになるのでしょうか?
書いていてサザエさんも同じだなぁと思いました。以前はカツオ側でしたが今ではマスオさん側ですね~。

ミワ君へ

ええっ? サバを読んではいけません。君はマスオどころか既に波平の域ですよ。マスオは33歳、波平は54歳です。ちなみにフネは48歳。すでに孫がいます。私なんかとっくにイササカ先生の域も通り越しています。
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トトロのとなり

Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
お金がないので遠くには行けない。
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