一路

BS日テレの「浅田次郎と眞野あずさが巡る中山道の旅」を見た。

浅田の小説「一路」の舞台となる中山道をめぐる一種の旅番組。
浅田はこう言っていた----昔から江戸時代の参勤交代という奇妙な制度に興味があったが、どうせ誰か他の作家により小説化されているんだろう、と思って放置しておいたが、どうやら参勤交代そのものを具体的に描いた作品はなさそうだ、と気づいて、作品化をはかり「一路」となった---



私も参勤交代にはおおいに興味がある。昔に行って、加賀藩の4000人のパレードをぜひ見てみたいものだ。数十名のお祭りの行列でも楽しいんだから、絶対に見ものであるに決まっている。しかし、その行列は通り過ぎるのに数時間を要し、下々は土下座で平伏しておらねばならないので、見物できる保障はないが・・・

ウィキペディアから引用した丹波・園部藩の行列。園部藩は2万5000石。小さな藩でも結構立派だ。加賀藩ならこれの10倍以上の規模のはず。


わたしは普段あまり時代小説を好んで読むことはないし、浅田次郎にいたっては昔の「鉄道員」(ぽっぽ屋)という短編集しか読んだことがない。が、参勤交代に引かれてこの「一路」を読んでみた。上下2巻の大部な小説である。これが、めちゃくちゃに面白かった。ストーリーも面白いし、江戸時代の道中を豊かにイメージできるし、擬古文的な言い回しや時代的な表現・語彙に満ちた達意の文が快調で日本語の心地よさを十二分に堪能できる。映画化・TVドラマ化も考えられるがその際にはこの浅田節は味わえないだろうから、魅力半減だ。しかし、映像でも見てみたくなる作品ではある。

話は、美濃国に知行をもつある旗本の、中仙道経由で江戸に至る参勤道中を描く。主役は道中を差配する若き共頭。お家騒動が筋運びの道糸となり、厳冬の中仙道の12泊の行軍を描く。なぜ普通の大名の東海道道中にせず、特殊な地位・小録の旗本の中仙道道中にしたのかは、最初違和感があるが、おいおいドラマの仕立て上の必然性がわかってくる。魅力的なのは主役の一路ではなく、もう一人の中心人物の殿様。バカ殿なのか名君なのか、なかなか傑物で時に爆笑もさせてくれるので読む場所にご用心。

コチラに中仙道の楽しい地図がある

この小説で読む限りは参勤交代は大変な事業である。全国300諸侯が250年間も続けた、ということは単純計算では延べで300X250=75000回も大旅行が行われた、ということである。こんなものすごい量の大移動はじつは江戸時代・ひいては日本の形を規定するくらいの影響があったのではないか。

たとえば、300諸侯の領地は全国に散らばるが、参勤交代の制度上、殿様の正室と子どもは江戸常住で、ほとんどの殿様は子ども時代を江戸で育つことになる。すなわち江戸時代の指導者層はほとんど江戸を故郷としていたことになる。明治維新後の版籍奉還・廃藩置県で諸侯は爵位を与えられて全員東京に召還されることになった時、皆唯々諾々と従ったのであるが、実は全員故郷に帰っただけのことであったから、内心喜んだのではないか。貴人にとっては田舎より東京の方が楽しいに決まっている。現在の地方選出国会議員たちの子弟が東京の名門私立学校に行っているようなものだ。選挙区が岩手の小沢氏も山口の安部氏も福岡の麻生氏もみんな東京育ちのお坊ちゃんたち。宮崎2区の江藤拓議員は世襲議員であるが、ド田舎の地元・門川中に通ったというだけでもエライのかもしれない。

大名行列ならぬ佐伯八坂神社の秋祭りの行列。
八坂神社 祭り
八坂神社 祭り posted by (C)オトジマ

九州の諸藩は旅程が1000km以上になり、江戸に近い諸藩に比べ出費の点でも大変なハンディを背負う。日向延岡藩は譜代藩。船で方財から出航して海路大阪まで行き、そこからは陸路東海道や中仙道で江戸に向かっていた。徒歩も大変だが、船旅も大変だ。艪漕ぎを併用していたから大勢の水夫が必要で、やはり多額の費用がかかったものだろう。日南の飫肥藩の場合、細島から船に乗り大阪に向かった。大小7隻の船を使い士卒276人内外、水夫269人くらいの規模である。乗客と同じくらいの人数の水夫が必要であった。コチラに詳細がある。

学校の歴史の時間には、幕府が参勤交代を命じた訳として、軍事的反抗を防ぐため大名に散財させて窮乏化をはかった・・・みたいなことを教えるが、浅田次郎はそれは結果論であって、当初はあくまで危急の際、江戸まで行軍するための演習という側面が強かったはず、と言っている。「一路」はそれを前提として物語が展開する。時代背景は幕末であるからかなりアナクロで、そこが面白い所でもある。フトンの中で読みながら眠るには面白すぎて眠れなくなるかもしれないが、ヒマな方には一読をお薦めする。

コチラに「一路」の関連ページがあるので興味ある方は参照。

















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トトロのとなり

Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
お金がないので遠くには行けない。
お金がないのでグルメ記事はなし。

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