NHK プロフェッショナル仕事の流儀 風立ちぬ

8月26日放送、「NHKプロフェッショナル仕事の流儀・宮崎駿スペシャル 風立ちぬ」・・・長ったらしいタイトルだ。

ポニョ以来、NHKはジブリ長編製作に張り付いて、映画上映中にそのメイキングドキュメンタリーを放送することが恒例になった。毎回とても面白い。全部録画して取ってある。どうやらこの秋リリースの高畑勲作品「かぐや姫の物語」も見れそうだ。この番組中で宮崎氏がNHKカメラに「パクさんの取材の成果はどうですか?パクさんは何やってんだろうね?」と言っている。今からそのスペシャル番組を楽しみにしている。

下:「かぐや姫の物語」製作中の高畑氏。宮崎氏より高齢だが若く見えるし、元気そうだ。


今回、の冒頭部は「風立ちぬ」の企画書を書いてる様子である。スタジオではそのころ「コクリコ坂」製作中であったから、NHKの「コクリコ坂」ドキュメンタリー「ふたり」の中でも宮崎氏が絵コンテを描いている様子を垣間見る事ができた。ちょうどその頃、3/11大震災があり、スタジオの中の緊迫をみることができた。その様子については以前

宮崎氏の製作スタイルは絵コンテを描きながら実製作に突入し、最後は時間に追われながら、収まりのいい結末を模索して苦しみつつギリギリで絵コンテを終える・・・というもの。実際の動画製作は大勢のスタッフの手にあるから、宮崎氏の姿を追うといつもかつも絵コンテを描いている、という地味な画面ばかりである。

この番組の中で気になったところ、面白く感じたところをいくつかピックアップしてみる。

まず悪評サクサクの主人公堀越二郎の声、庵野秀明について。2012年12月、公開を7ヵ月後にしてそろそろ音入れが迫る頃、宮崎は誰の声を当てるか思い悩んでいた。会議で思案投げ首の時「昔のインテリは滑舌がよくて声が高いんだよ。無口なんじゃなくて、頭いいから余計なこと言わない。ややこしいキャラクターなんだよ」・・・なんてやり取りがあったとき鈴木プロデューサーがふと「素人の方がいいのかなぁ。・・・・・庵野・・・」と、洩らす。宮崎氏は「庵野ですか?」とその意外さに驚くが「面白いね」と同意する。鈴木氏は実は腹案として持っていたのかも。さっそくその場でタブレットで庵野が話しているところを映しだす。

その二日後にスタジオに庵野を呼び出し、堀越が下宿近くの駄菓子屋で買ったシベリアを貧民の子供に与えようとする場面で音声のテストをする。別室でそれを聴いていた宮崎氏は思いがけぬ掘り出し物に大満足で「いいじゃん。やった」と鈴木氏をたたく。これを見ると、あの妙な声と素人棒読み風は宮崎氏も納得済みの意図的なものであったことがわかる。


震災の大群衆の場面が大変だ、とは数年前から聞いてきたことであるが、その4秒のカットに1年3ヶ月もかかった、というのを聞いて驚いた。「耳をすませば」で雫が歌う場面に1年かかった、というのとは比較にならない手間だ。担当アニメーターがラッシュ上映を見て「あっという間でビックリしましたよ」というと宮崎氏は「あっという間以上のことはあったよ。うまくできた。」とねぎらった。


震災後、宮崎氏一行が東北の支援に行く場面がある。映画上映会場で色紙に次々とサインして子ども達にあげる場面がある。「アレッ?子ども達はどんでもないお宝をもらってるぞ」と思う。実は宮崎氏は原則としてサイン要求に応じないという。ネットオークションで数十万円の高値で取引されているのを知り、怒ってサインをしないことにしたそうだ。現在ヤフオクで見ても出品はマレである。この時には「支援」のサイン会であるから後日換金されることを承知だったとか。NHK番組中でも原画をどんどんゴミ箱に捨てる場面があるが、原画だってオークションでは結構な値段がするから、ジブリのゴミ箱はオークション出品者にとってはお宝の山だ。


毎度、ジブリ密着のNHKドキュメンタリーを見ると宮崎監督の仕事は鉛筆で絵を描いては消しゴムで消すばかりで、なにも派手な立ち回りがない。机の上のきわめて地味なアナログ作業だ。一年以上かかって描いてきた絵コンテの束をみて「よくこんなに描いてきたもんだね。一寸先は闇でやってんだから」と言う。今回の絵コンテは水彩絵の具で色つきだからすごい手間だ。オリラジの中田は読了するのに2時間かかったというが、普通の人なら5~6時間かかるのでは。


エンディングでうまいこと着地できるかどうかはほとんどバクチである。映画の感想は各人各様だから断定はしないが、私は今回はなんとかうまくフィニッシュできたと感じた。私にとっては「千と千尋」以来の満足。「トトロ」「魔女の宅急便」、さては「耳をすませば」の奇跡的なエンディングとは、映画の種類が異なるので比べにくいが、「もののけ姫」「ハウル」「ポニョ」の喰い足りないフィニッシュに比べおおいに満足した。

ただし、今回のNHK番組はコクリコ坂の時の「ふたり」に比べると親子の葛藤や、若手監督の未熟ゆえの苦悩などがない分、さしてドラマティックではなかった。まぁ、しかし巨匠の手仕事をじっくり見れるというのは貴重な体験だ。それも宮崎氏は今回限りでの引退宣言をしているのだから、これが最後と思えはなおさら。ただし、彼の「最後」は幸いにも度々覆っているのでそれに期待したい。

彼の引退宣言は世界中に配信され話題になった。日本を代表する芸術家である。日本の首相の名はすぐに忘れ去られても宮崎氏の名前は不滅だろう。そんな人物が人間国宝でも国民栄誉賞でも文化勲章でもない、というのも変である。死んでからかな?

彼は日テレのキャスターに今後のことを聞かれて「金のことを考えなくていい仕事をしたいね」とも言っていた。それにも興味あるなぁ。彼の午前中は毎日近所のゴミ拾いに費やされているというから、なにかボランティアかな?
ジブリ発行の雑誌「熱風」では7月号では憲法改悪反対特集で宮崎氏自身、平和憲法死守に熱弁を奮っていたので政治運動かも・・・。引退後も目の離せぬ気骨の人である。

※映画「風立ちぬ」のレビューはコチラ











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心配

宮崎監督、タバコ吸い過ぎ!
このご時世、再放送あるのかが心配。

無題

僕もこの番組見ました。見応えありましたねえ!
ジブリが未だデジタル作画じゃない理由って、
宮崎駿カントクが自ら鉛筆で原動画チェック(修正)する為なんですね(爆)
せめて、動画チェックくらい人に任せればいいのに!!
一般観客には微々たる違いなんて判りませんよ。

これまで何度も「これが最後」と「閉店セール」を繰り返して
きた訳ですが、今回は本当かも知れませんね・・・。

ミワ君へ

まったく。ジブリは原発反対を訴えているけど、自分の肺の中は福島よりよっぽど汚染されてますな。宮崎氏の肺の中はほどんど腐海。あそこはエライ人ほどタバコを吸うんですから。宮崎氏、高畑氏、鈴木氏、それに宮崎吾郎氏までヘビースモーカーですよ。こんどの映画の中でも主人公に思い切りタバコを吸わせてますよ。それも自分の吸っているチェリーを。

らじさんへ

ジブリのデジタル化・CG化は「ハウル」のころで絶頂となり、あとは進歩がないようです。意図的にですが。しかし、場合によっては絶対CG化して欲しいところがありますね。今回でも、手前から奥方向への移動の部分の動画が疎になっていてややしらける場面がいくつかありました。冒頭の夢の中で二郎の飛行機が橋の下をくぐるところはCGのようでしたから、あの手を使えばいいのに。
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Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
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