キャンプの夜の読書

4月5・6日は寒気が流れ込み寒い週末であったが、かねて生徒達とキャンプに行く約束をしていた。土日なのに閑散とした須美江キャンプ場。オートキャンプ場なら何も借りないですむから安いだろう、と思ったら意外や3200円、テントを借りる台付テントなら1400円。快適な台付テントだって車を横付けできるんだから高い料金のオートキャンプ場はバカらしい。
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P4053616 posted by (C)オトジマ

しかし、いかんせん寒い!おまけに日が暮れると雨まで降ってきた。大騒ぎで楽しい子ども達をほったらかして車の中で懐中電灯の灯りで本でも読むことにした。これが面白くて一晩で読んでしまったのである。

辞書になった男 ケンボー先生と山田先生   佐々木健一著 文芸春秋刊
NHKBSで昨年4月に「ケンボー先生と山田先生--辞書に人生を捧げた二人の男」という番組があったらしい。残念ながら見てない。この本はその番組のディレクターだった佐々木氏がその番組の内容を更に掘り下げてている。相当の下調べをして番組を作っているだけに、一回限りの放送では盛り込めなかったことも多々あり、一冊の本にまとめた。本屋大賞を取り、映画化もされた三浦しおんの「舟を編む」は辞書の編纂という超地味で小さな世界を描いているがとても面白かった。それと似た世界であるが、さらにリアルでドラマティックなドキュメンタリーといえる。

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P4063644 posted by (C)オトジマ

二人の男は見坊豪紀(けんぼうひでとし)と山田忠雄という辞書編纂者である。二人は東大文学部国文科の同期生であり、大学を出てすぐ、恩師金田一京助の命で戦時中に協力して三省堂の「明解国語辞典」を編纂した。その後明解国語辞典は三省堂を支える重要な辞書となるが、改訂作業の遅れにともない、二人はそれぞれ同じ三省堂の辞書である「三省堂国語辞典」と「新明解国語辞典」の二つの辞書の編集主幹となる。この本はこの二人の天才的個性的辞書編纂者がいかにして協力と友情から対立に至ったのかというナゾを軸に展開している。

二人のうち山田忠雄と彼の「新明解国語辞典」については赤瀬川原平の「新解さんのナゾ」でおなじみである。赤瀬川は「新明解国語辞典」の中から面白い語釈をたくさん抜き出して「新解さん」の独特な個性を抽出した。新解さんは辞書のくせに奇妙な個性や主張や独断をちりばめているのである。

有名な項目の例が「恋愛」
れんあい【恋愛】特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒にいたい、できるなら合体したいとう気持ちを持ちながら、それが常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態。(第3版)

ということは合体がかなった後はもう恋愛状態を脱したということなのか・・・。そういわれればそんな気もするな。合体が恋愛の最終目的なのは生物の生殖本能としては当然だからそれに触れても不思議はないか。しかし有名なこの語釈は現在の版では見られないようだ。私の持っている第3版にはある。しかし次の【老爺】については第3版には項目そのものがなくなっている。

ろうや【老爺】著しく年をとったため、動作に活発さを失い、過去の思い出に生きる男性。

んーーん、身につまされるなぁ・・・・

動物園では思わず噴出してしまった。これも第3版ではおだやかな表現に変更されている。動物園から苦情が殺到したそうだ。

どうぶつえん【動物園】生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀なくし、飼い殺しにする、人間中心の施設。 (第4版)

私も試しになにか面白い例はないかとパラパラとめくってみた。

しっと【嫉妬】自分より下であると思っていた者が自分より多くのものを持っていたことに気づいた時の、むらむらとしたねたみの気持。

エエーーッ! 嫉妬ってこんなんだっけ!? そういわれれば思い当たるフシが多々ある私なのでした。齢をとるにつれ嫉妬多き人生である。

更に凡人の項も凡人が読むと凡人のくせにムカつくのである。

ぼんじん【凡人】自らを高める努力を怠ったり、功名心を持ち合わせなかったりして、他に対する影響力が皆無のまま一生を終える人。



新解さんの引用をしているとキリがない。ただし実際に「新明解国語辞典」をかたはしから読んで面白い記述を見つけるのは大変。ほどんどの語句の語釈はフツーである。山田氏が亡くなられた後の改訂版では山田色はうすれてきているのではないか。しかし驚いたのは久しぶりに小型辞書を手にしてみたら、その字の小さなこと! エエッ!?昔は自分はこれを平気で読めていたのか、と思うといかに目が悪くなったかを思いしらされた。現在はもっぱらフォントの大きさを自在に調節できる電子辞書だよりである。

三省堂の二つの国語辞書は両方とも売れて三省堂を潤わせたそうだが、年を経るにつれ新明解のほうが売れ行きを圧倒的に伸ばし山田の印税収入の方が多くなったはずだが、見坊豪紀と山田忠雄では、見坊の方が辞書編纂の先輩で本当の大御所である。見坊が大学院卒業後すぐに明解国語辞典の編集に取り掛かかって以後、山田は長いこと見坊の下で働くことになる。山田に屈折した感情がわだかまり、後に対立に至る。新明解には各所に山田の鬱積した心情が用例の中にうかがわれるという。

見坊は言葉の用例収集の鬼となって生涯に140万語の用例をあつめた。まぁ、素人にはなんのことやらよくわからないが、超人的、神の域に達する偉業だそうだ。人間が神の域に達するには人間であることを捨てる必要がある。見坊の人生はすべてが言葉の収集に費やされ、家族の会話や団欒も日曜のドライブも旅行もなにもなかったという。新解さんの面白さに比べると地味ではあるが、すごい人生である。

NHKディレクターの佐々木氏はこれが最初の著述だというけれど、すでに立派なライターである。番組を見ておけばよかったと悔やまれる。


さて、明け方には気温は5度Cまで下がる。夏用シュラフでは全然寒さが防げず、ウツラウツラの夜が明けるとさわやかな青空。しかしまだ風は冷たく、やはりキャンプは水遊びができるような気温になるまでするものではないな、と悟った。写真で見る限りは極楽のような須美江の光景であるが水遊びには寒い。
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P4063626 posted by (C)オトジマ

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橋のむこうは須美江海水浴場。
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P4063638 posted by (C)オトジマ

キャビンは8400円。快適であるが、家にいるのと全く同じ。ぜんぜんワイルドではない。
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P4063639 posted by (C)オトジマ

サクラは葉ザクラ。
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子ども達じゃなくて生徒達なんですね、何の生徒か気になります

ミワ君へ

塾の生徒たちです。中学3年生、というより高校新入生ですね。私の子供はすでに皆大人。
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Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
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