思い出のマーニー

ジブリの新作「思い出のマーニー」を見てきた。

「アリエッティ」「ハウル」と同じくイギリスの児童文学を原作としている。原作は読んではいないが、パンフレットで三浦しおんが書いているように、ほぼ忠実に映画化しているらしい。舞台はイギリスから日本の北海道に翻案している。



アリエッティ(床下の小人たち)の舞台が日本になっているようなもの。東京郊外にコーカソイド系小人の家族が昔から暮らしていた・・・という木に竹を継いだような考えれば考えるほど奇妙で無理のある設定のアリエッティよりはリアリティがある。宮崎駿氏は舞台を瀬戸内海として構想していたらしいが、監督を務めた米林ら若手スタッフらは勝手に北海道にしてしまったらしい。結果的には北海道で正解。ロシアに近く革命後に白系ロシア人がいたこともある。相撲取りの大鵬を想起する。金髪の少女がいたってとんでもなく奇妙でもないかもしれない。少なくとも北海道から2000kmも離れた九州から想像すると、そんなこともあるのかな、と思えなくはない。
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主人公は12歳(中1)の少女。中学生の少女を主人公とするのはジブリではおよそ20年前の「耳をすませば」以来。ぜひ小学生高学年から中学生にかけての子ども達に見て欲しいものだが、さて現在のジブリのファン層からしてどうなんだろう。さらには、この物語はストーリーは地味だし、かなり錯綜していて年少者にはわかりづらい。興行的には「アナ雪」の単純さと調子よさには及ぶべくもない。しかし、そこがジブリのよさなのである。

この先、多少のネタバレがあるので未見の方はそのつもりで。

主人公は札幌で暮らす少女・杏奈である。これは原作と同名。彼女は自分の生い立ちをめぐり家族や周囲に心を閉ざしている。杏奈はゼンソク持ちで夏休みに田舎の親戚宅で転地療養することになる。波静かな入り江にある集落。私なりに場所を想定すると厚岸湾あたりか。杏奈はそこで入り江の湿地帯に建つ不気味な洋館に暮らす金髪の少女マーニーと知り合う。杏奈とマーニーとの交流は夢かうつつか判然としない。その中で杏奈は不思議な体験をする。その経緯はミステリアスでホラーじみている。観客はマーニーの正体やストーリーの行く先がわからないまま終盤まで連れて行かれる。

マーニーをめぐる謎は物語の最後で解け、それと同時に杏奈の出生の秘密が明らかになる。いってみればこの話は昔の少女マンガや韓国ドラマの定番ネタ「母モノ」なのである。少女マンガを原作とする「コクリコ坂」も出生の秘密にまつわる物語。そこを安っぽいドラマにしなかったのがジブリらしいところ。「マーニー」の主人公杏奈は12歳で魔法は使えないし、特段の能力も持ってない消極的な少女。恋愛モノでもないのでストーリー運びは全然ドラマチックにはならない。いってみれば杏奈の心に引っかかっていたトゲがとれるだけの話。

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エンディングでは高畑勲監督作品「おもひでポロポロ」を想起した。同作では、最後に、都はるみの「愛は花、君はその種子」が流れエンディングクレジットロールがスクロールする数分の中で劇的な結末が訪れ、観客の涙腺がどっとゆるむ、という凝った手法をとった。フランスの上映では開幕前に「エンディングロールが流れはじめても決して席を立たないように」とアナウンスされていたというくらいである。「思い出のマーニー」も同様。判然としない物語、割り切れない杏奈の心の動きがエンディングロールの間に解決され、観客は気持ちよく席を立つことができる。全然派手さはないが、ひそかに心に沁みる作品。エンディングで流れるプリシラ・アーンの「Fine On The Outside」もなかなかいい。杏奈の心象にジャストフィットし孤独な思春期の少女の心を語る。できれば日本語訳で聴きたい。というか日本語の歌詞がないとこの映画のエンディングに使われた意味がないのではないか? 英語歌詞はここに掲載はできないのでコチラで見て欲しい。

Youtubeでは日本語訳のついた歌唱を聞ける。


本作は若手(とはいっても40過ぎ)の米林監督の作なので巨匠(宮崎・高畑)らのように湯水のように時間と予算を使える作品ではなく短期製作・低予算をむねとしている。しかし作品を見る限りではとんでもない手抜きとは見えず、いつものように素晴らしい美術で美しく情感のある画面を楽しめた。背景画集の「ジ・アート・オブ・ジブリ」が発売されたらまたレポートすることにする。

ところで主人公の名前杏奈について。最近の日本では女子の名として杏奈という名前はザラにいるし二昔前には甲斐バンドの「杏奈」という歌も流行った。それ以上のことはなんら思いもしなかった。ところが・・・・。
たまたま先日エル・グレコに関する番組を見ていたら幼子イエスを抱く聖母マリアとかたわらの祖母の絵があった。
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キリストの祖母、つまり聖母マリアの母が「アンナ」なのである。この歳までキリストに祖父母がいたことに思いが至らなかったのもうかつであったし、当然その名を知るよしもなかった。無知とはおそろしいもの。アンナは英名でHannahを起源とする。そのままではハナ、ハンナであるし他に派生が多い。カナで書けばアン、アンナ、アナ、アンネ、アニー、アニータ、ニーナなどなど。ずいぶんとお馴染みの名前ばかりではないか。今が旬なのは「思い出のマーニー」以外に朝ドラ関連で「赤毛のアン」。主人公の安東ハナのハナもそう。そして今年最大のヒット作ディズニーの「アナと雪の女王」。まぁ、キリスト教国では聖人由来の名前はすごくポピュラーということなんだろう。

ところで「マーニー」主題歌を歌うカナダ人歌手の名がまたまたプリシラ・アーンなのである。なかなか美人。
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彼女は大変なジブリファンで、自分でジブリ映画内で使われた曲のカバーアルバムを出したことからジブリに注目されて縁ができ、ついには主題歌を任されるに至ったという成功譚を持っている。
彼女のアンの綴りはAHNでファーストネームではなくファミリーネームである。だからこれは聖祖母アンナに由来している訳ではなく、単なる偶然。 彼女は韓国系で姓は漢字では「安」と書くはず。「安」は韓国ではありふれた姓。伊藤博文を殺害した英雄・安重根、日本で活躍している女子プロゴルファー「赤毛のアン」ことアン・ソンジュなどが有名。以上アンナ関連でひとつ賢くなった話。

アン・ソンジュは赤毛のアンというより金太郎という風貌。
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Re: Marnie

思い出のマーニーがタイで? Even in Japan, its box office wasn't so good. I wonder if it can get lots of viewers in Thai.The movie describes the delicate sentiment of a girl. There is no big action or surprise ending. The story is mysterious and hard to understand. I believe most of kids must get bored.
BTW, don't you get a feeling of strangeness in replacing the place from England to Japan? We Japanese felt a bit strangeness, there is a blonde girl in rural backwater. The location is easten Hokkaido, cold weather region--far from Tokyo more than 1500km. We rarely see white people such a rural area.
I didn't know Yonebayashi left Ghibli. However talented animators often get established as a freelancer. Movie industries need fluid of human resources. Yonebayashi's leaving doesn't mean he never works on Ghibli. I hear Ghbli has no plan of next movies now. For example, Miyazaki Goro worked at NHK in 2014. He directed an long amime series "山賊のむすめローニャ"--Ronja Rövardotter. https://youtu.be/BsYWw0AzMAs
If you have any photo of Marnie in Thai, please send me. I will post them on my blog.
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現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
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