数奇です

NHK教育テレビを漫然と見ていたら「漫勉」という番組があった。浦沢直樹は、昔、手塚治虫が普段はスタッフどころか奥さんにも見せない密室でのマンガ執筆の様子をNHK番組中で公開したのを見て大変興味を持ったとか。マンガ家が実際に執筆している様子はあまり公開されていないそうだ。浦沢は世界中のマンガファンが日本のマンガ家がいかにして描いているのか、知りたがっているし、そのワザを後代に残すのは日本のマンガ家の義務だ、と言う。

執筆中の手塚治虫。  NHK「漫勉」よりスクリーンショット
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PB201085e posted by (C)オトジマ

ジブリの宮崎氏などはNHKが度々密着取材特番をしているのでおなじみである。マンガ家では以前に浦沢自身がNHK番組に出て、執筆の様子を公開したことがある。私はさいとうたかおがゴルゴ13を執筆してるところを見たことがあるし、その他にもあるんではないか。

浦沢直樹。  NHK「漫勉」よりスクリーンショット
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「漫勉」では浦沢が番組のホストとなり、売れっ子のマンガ家に取材を交渉し、その様子をしっかり見せるというこりゃ素晴らしい企画だ!まずは「かわぐちかいじ」。「紺碧の艦隊」で有名だ。かわぐちは明治大学マンガ研究会出身とか。浦沢とかわぐちが明大マン研部室でかわぐちの執筆の録画を見る、という趣向。

明治大学でかわぐちかいじ。 ちなみに浦沢は明星大学出身。
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二つ目は山下和美。「天才柳沢教授シリーズ」が有名。浦沢が山下の自宅で山下とともに山下の録画を見る。いずれもベテラン。作業はエンピツで下書きしペンで墨入れするという昔ながらの作業。アシスタントたちが背景を入れ、スクリーントーンを貼ると見事な絵が完成。今では初めからワコムみたいなペンタブレットで書き込む人が多いらしいが、ここでは見れなかった。

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是非次回も見たいな、若手の作家が出るかな、と期待していたところ、番組表を見たり、ネットそ調べたりしてみても次回がないのである!なんとどうやら単発番組らしい。教育テレビでは珍しい。残念・・・・
私は齢を取ってからはマンガを読む習慣があまりないのだが、浦沢の「20世紀少年」や、かわぐちの「ジパング」は読んだことがある。いずれもとても面白かった。しかし、山口和美は読んだことがない。

山下が自宅で浦沢を出迎える。
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PB211112e posted by (C)オトジマ

問題は浦沢が訪れる山下の家である。素晴らしい数奇屋造りなのである。立派な茶室もある。さすが売れっ子マンガ家になるとこんな家に住めるのか、と驚く。番組中で山下がいかにしてこの家を建てたか、をドキュメンタリーにしたマンガ「数寄です」について言及があった。あまり山下のマンガには興味がないが、そんな話なら面白そうだ。さっそくアマゾンで買ってみた。

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作家が家を建てる話では、時代小説化の佐伯泰英の「惜櫟荘だより」を読んだことがある。佐伯の場合も数奇屋建築であるが、彼の場合は岩波書店所有の吉田五十八の戦前の名建築を購入して全面修復するという工事。山下の場合は土地を物色するところから始まる。おそらく事実経過と並行してマンガを雑誌連載し、合計42話にわたる話。山下は売れっ子マンガ家でお金が余っているのでそんな風流でお金のかかる家を建ててのか、と思っていたらそうではないようだ。都内、それも世田谷あたりと思しきところに土地を取得し、専門工務店が凝った木造住宅を建てるんだから軽く億を越える費用がかかるはず。詳しい広さや金額は明示されていないのが残念。どうせ書くんだったらすべて明かせば参考になるんだろうが。

山下邸に上がりこむ浦沢
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山下はもともと「和」が好きなんだとか。たまたま大手ゼネコンで設計をしている蔵田徹也と知り合い、彼の和への造詣にほれ込み、和風ではなく本物の「和」の住宅の設計ができるか、依頼してみた。すると蔵田は引き受けたのみならず、会社を退職して、山下の数奇屋住宅の完成に人生を賭ける、という暴挙に出た。山下は彼の意気に感じて建築を決意する。そのとき弱冠30歳の蔵田はもしこのプロジェクトが実現すれば処女作が有名マンガ家の高級数奇屋という大きな実績が得られ、その後、数奇屋建築の専門家として名を馳せることができるだろう。

茶室に入っていく。
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まぁ、お金さえあればどんな建築だってスイスイできるのである。しかし山下には諸般の事情で手持ち資金はゼロだった。カネの工面が不可能なのでやっぱりやめよう、という山下を数寄屋住宅を建てるのが自分自身の夢でもある蔵田がいろいろと説得したり資金計画の相談に乗ったりしながら土地の取得にまで至るのが第1巻。第二巻で着工し、第3巻で完成、という段取り。それ以降はまだ単行本化していないが、その完成した数奇屋での住み心地になっているらしい。

中庭があってしだれ桜が咲く。
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山下の仕事場。数奇屋の二階
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PB211119e posted by (C)オトジマ

家を建てる話と山下の自伝も織り交ぜた話になっている。山下の「柳沢教授」を読んでいないので全然知らなかったが、山下の祖父と父は国立大学教授という、アカデミックな家系なのである。父が横浜国大教授で山下自身も横浜国大に行っている。トキワ荘の時代と違い、現代ではマンガ家も高学歴化が進んでいるんだなぁ。すなわち昔なら文学の道を選んだような才能がマンガの世界になだれこんでいるからマンガのレベルが上がってしまい、テレビドラマや映画の原作がマンガばかりになっている。

suki 1sss

この漫画は家を建てる話だが、山下は全く素人。そこで専門的な話、技術的な話は設計者の蔵田がマンガで登場し縷々解説する趣向になっている。蔵田は各話の終りのページで建築にまつわるエッセイを書いている。無名の若者がこのマンガで一躍有名人になってしまったのではないか。蔵田は東大の建築科出身のようである。コチラには蔵田の友人で山下邸に招かれた方のブログがある。うらやましい。







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Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
お金がないので遠くには行けない。
お金がないのでグルメ記事はなし。

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