フューリー

ブラッド・ピットの戦争アクション映画、「フューリー」が評判がいいので見てみた。ミリタリー物はキライではないが、荒唐無稽なものは興味ない。フューリーは大変リアルな描写の作品。フューリーとは主人公の戦車につけられた愛称で「激怒」の意。

話は第二次大戦末期、ドイツ戦線でのある戦車部隊の戦闘を描く。戦車隊といってもたった4両。隊長がブラッド演じる軍曹ウォーダディー。そこに若い補充兵ノーマンが送り込まれる。前線は理想や建前とは程遠い過酷で残虐な日常。ノーマンは厳しい現実の中でもまれて一人前の兵士になっていく。戦車隊はドイツ軍のティーガー戦車との遭遇戦で他の3両は壊滅してフューリーだけが生き残る。そのフューリーも地雷を踏んで擱座。そのなかで多勢なドイツ軍部隊との間で最後の死闘が始まる・・・・

この予告の中に博物館保存のティーガーが出てくる。


お話は単純だが2時間まったく飽きさせない。やはりそのリアルさ、である。戦場の兵士たちの心情もさもありなん、というドロドロの赤裸々。アメリカ軍に対する美化も全然ない。この映画中では敵の捕虜は容赦なく撃ち殺す。若い女とみたら強姦する。戦時条約もなにもない。日本の戦争映画にありがちなお涙ちょうだい的な感傷や死んでいく若者の美化も全くない。きっとこれが実際の戦争の現場というものだろう、と思える。

ただ、アメリカでこんな作品が作れるのは第二次大戦への参戦にアメリカには語るに足りる大義があり、ドイツにはなかった、というのが前提だろう。日本でこんな作品を作るとフィクションでは済まなくなるおそれがある。それでもこんなコンセプトの日本映画がいつの日か作られるべきだ、と思う。それこそ慰安婦とか捕虜虐待とかの歴史的事実をちゃんと描けた作品である。

お話は1日か2日の出来事である。映画は初めから終りまで薄暗い曇天か夕暮れ。陰鬱な光景。道はどこもぬかるみの泥濘でそのなかに死体がゴロゴロと転がる。死体をブルドーザーでかき集める場面もある。舞台は戦車の中。ここも薄暗くてキタナイ閉所。宮崎駿の「泥まみれの虎」というマンガの中に戦車の中では大砲の空薬莢の中に小便をする、という場面があるが、映画でもまさにその場面がある。戦車はいわゆるシャーマン戦車で本物である。対するにドイツ軍のティーガー戦車が1両登場するのであるが、なんとこれが本物だという。イギリスの博物館に世界でたった1台動態保存されているティーガーを撮影に使ったという。どうりで砲撃戦にリアリティがあるはずだ。

フューリー公式サイトに米軍シャーマンと独軍ティーガーとの比較がある。面白い。ティーガーは56t!我家の車の50倍!日本陸軍の代表的戦車九七式中戦車が14tだからとんでもない化け物。
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アメリカのような資本力がない日本で戦争映画を作ろうとすると必ず兵器のリアリティも問題に行き当たる。アメリカには大戦中の各種兵器が多数残されているが日本は敗戦国なのですべて破却されてまった。レプリカを再現するにしても大きなものや可動するものは多額な費用がかかる。

中でも戦車が難物である。キャタピラが難題。昔、山本薩夫監督が「戦争と人間」(日活)の戦争場面の撮影でソ連の映画関係者に協力を求めたら、「戦車なんて作れば簡単じゃないか」と軽く言われた、という。「戦争と人間」には確かに戦車が登場する場面があるが、明らかにブルドーザーの車体に張りぼての上物を被せたニセモノ。キャタピラがいかにも重機の幅広いもの。日本陸軍の戦車はだいたいチャチでキャタピラの幅がとても狭かった。

司馬遼太郎は戦車兵だった。彼は各所で日本軍の戦車の悪口を書いている。戦車兵にとっては走る棺桶だったとか。とにかく装甲が薄くて簡単に貫通した弾丸が車内ではね回るという。それでも中国兵は日本軍の戦車を見ただけで逃げ出したという。太平洋戦争では島嶼や海洋での戦闘が多く、戦車戦の場面は多くなかった。ただビルマ戦線ではイギリス軍M3戦車で戦う場面があったがイギリス軍の戦車には劣勢だったとか。ノモンハンでもソ連軍戦車にはやられている。私の父は1945年8月に満州になだれ込んできたソ連軍の戦車を見てそのデカさに肝を潰したという。幸い応召と同時に終戦になって戦闘に参加せずに済んだ。

やはり戦車は大陸のもの。大戦中のドイツとソ連の戦車に尽きる。宮崎駿はその一端を「泥まみれの虎」としてドイツ軍の1両のディーガー戦車の素晴らしい奮闘を描く。ちょうど「フューリー」みたいな設定である。複雑な戦闘を着色のマンガで描いているが、結局よくわからん、という感がある。やはり実写映画の方が圧倒的に迫力がある。

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高校生の頃、ソ連映画「ヨーロッパの解放」を見た。ソ連がいかにして大祖国戦争を戦い抜いたか、というドキュメンタリータッチの戦争映画である。本物そっくりのスターリンやヒトラーが出る。特筆すべきはその撮影の壮大さである。大平原の戦車戦では空撮で行けども行けども大地に戦車群が散らばりキャタピラの轍が見渡す限り広がる。当時の超巨大国ソ連が国営で作った映画で本物の軍が総出で協力しているからこそできた映画。なんでもCGで作れる今の時代ではとても再現できない映画だろう。幸い今はYoutubeでだいたい見れるようである。

「ヨーロッパの解放」はコチラで見る事ができる。埋め込みはできないようだ。






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Author:トトロのとなり
現在トトロのとなりの門川町に住む。
日豊地域での見聞を中心に徒然を記す。
お金がないので遠くには行けない。
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